「文系でもわかる!」3軸ブラシレスジンバルの「PID」キホン
公開日:
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最終更新日:2014/06/12
Brushless Gimbal
最近お出かけする機会が多く、なかなか記事を書く時間がとれません。今日も色々届く予定なのですが、朝からおでかけ(T_T)そんな私を察してくれたのでしょうか? 癒し系の私がお送りするわけじゃない PID 設定のキ・ホ・ン(ハート)講師はもちろんあの方(爆)
「文系でもわかる!」3軸ブラシレスジンバルの「PID」キホン
避けては通れない「PID」について、難しい計算式を使わないで解説します。また個々のジンバルに合った「PID」設定のコツも書いておきます。
【1】「PID」が必要な理由とは
ONとOFF操作だけでは実現できないスムーズかつアナログ的に3軸ブラシレスモータカメラジンバル(略して3軸ブラシレスジンバル)操作を行う方法として「PID」利用されています。
ここでの「操作」とはコントローラー(Alexmos 8bit又は32bitボード)がジャイロセンサ(角速度センサー:角速度を検出するデバイス)から情報を受け取り、ブラシレスモーターを動かして、カメラジンバルを安定位置(水平・正面)にするため必要な操作することを指します。
従来はステディカムマーリンやグライドカムのような「やじろべえ」原理を利用したものが中心でした。これは非常に滑らかな歩行映像が撮れる特殊撮影機材です。数多くの有名な映画やドラマなどで利用されています。欠点は弱風でも影響を受けやすく、カメラを付け外しする度にバランス調整が必要なほどシビアです。さらに求められる操作技術のレベルが高く、身に付けるまでの習得時間を要します。
3軸ブラシレスジンバルは弱風に対して一切の影響を受けることがありません。また一度カメラジンバルのバランスを調整するだけで、付け外しの度にシビアなバランス調整を必要としません。また取り扱いも簡単で、初めての人でもぶれない歩行映像が撮れます。
欠点をあげるとすれば、従来のステディカムと比較して滑らかさで多少見劣りする印象があります。また操作に電子部品を使うため耐久性に劣る点、リチウムポリマーバッテリーの慎重な取り扱いが必要、そして滑らかな映像を実現するには、今回説明する「PID」の設定方法を理解する必要があります。
※角速度とは、単位時間あたりの回転角を言います。
単位は、deg/s(degree per second)で表すのが一般的です。
【2】PID制御で影響を受けるものとは
- 操作する環境(歩いたり走ったりした時の揺れ方(角速度)が小さい大きい)
- 操作するジンバル(部品のガタ、3軸の静止バランス、回転軸の摩擦、センサー位置等)
- 使用方法(ゆっくり又は急激なチルトパン)
- パラメータの値(PIDの設定値)
【3】PID制御の最適な操作とは
操作する環境や個々のジンバルに応じた最適な制御パラメーター(設定値)を求めます。
それではどのような操作が最適なのか、いくつか例を挙げます。
①安定位置へ短時間で到達すること
不安定な揺れ(角速度)をセンサーで読み取り、姿勢が大きく崩れる前に速やかに水平又は正面へ操作する。
②オーバーシュート/アンダーシュートの抑えること
安定位置を通り過ぎる、又は安定位置の手前で操作終了することがないこと。
③ハンチングの安定性
発振(振動)が限りなく小さいことが好ましい。ハンチングが大きいと意図しない結果となる。
参考動画
④オフセットの修正時間が短いこと
操作の終了時に安定位置とのズレが生じることがあります。これをオフセットと呼びます。このオフセットから短時間で安定位置へ修正すること。
⑤外乱の修正時間が短いこと
急激な揺れ(角速度)に対して、短時間で安定位置へ操作できること。
【4】PID制御のパラメータ(設定値)について
P、I、Dの各パラメーターは相互に影響しているため、あちらを立てればこちらが立たないといったシーソーのような関係があります。
具体的には、PIDのうち一つだけ設定して、他を無視する(ゼロ)にするといった極端なパラメーターでは最適な操作することはできません。最適な操作をさせるには各パラメーターの「妥協」が求められます。よって何でもこなせて汎用性のある「万能なパラメーター」は存在しません。
例えば同じ部品を使用しているジンバルであっても、組み立て精度(重心位置・水平垂直)の差によって、同じパラメーターでも異なる結果になります。
【5】PID各動作の役割について
- P動作(比例動作)は基本となる操作を行います。しかし単独ではオフセットが生じたり、操作開始するのが遅くなります。
- I動作(積分動作)はオーバーシュート又はアンダーシュートを抑える役目を持っています。
- D動作(微分動作)はP動作の操作開始を速くする役目を持っています。
【6】PIDパラメーターを求めるコツ
調整の順番は 「P」 -> 「D」 -> 「I」の順番で行ってください。
(1)「P」パラメーター
+↑増加させると
○オーバーシュートを抑えます。
×ゆっくりと動作して安定位置まで時間が長くなります。
×オフセットが大きくなります。
-↓減少させると
○安定位置までの時間が短くなります。
×オーバーシュートが発生しやすくなります。
×オンオフ動作と同じようになるのでハンチングが発生します。
※ゆっくりとしたチルトパン、あるいは静止した状態において、ハンチングが発生しない限界点まで、段階的に値を下げる調整方法が良いでしょう。ハンチングは2種類あります。Pパラーメータを減少させると、目に見えてブルブル震えることがあります。これは「操作が弱すぎる症状」です。この場合はパラメーターを徐々に増加させます。
(2)「I」パラメーター
+↑増加させると
○ハンチングやオーバーシュート、アンダーシュートが小さくなります。
×安定位置になるまでの時間が長くなります。
-↓減少させると
○安定地になるまでの時間が短くなります。
×ハンチングやオーバーシュート、アンダーシュートが発生しやすくなります。
※PとDを調整した後で「I」を調整します。安定位置に対して行き過ぎたり、未到達したりしないバランスのとれた妥協点を求めます。「I」パラメーターは最低でも各3軸「0.01」を入れてください。ゼロにするとPDをいくら調整しても安定しません。
(3)「D」パラメーター
+↑増加させると
○安定位置へ速く到達させることができます。オーバーシュートを抑える効果もあります。
×操作中に細かいハンチングが発生しやすいです。
-↓減少させると
○外乱に対する修正時間が短くなります。
×外乱の時に操作量が大きくなり、安定位置を通り過ぎてから戻るまでに時間が長くなります。
※外乱発生時にハンチングが発生しない限界点まで、段階的に値を上げる調整方法が良いでしょう。最初にPを調整しますが、DをゼロまたはPよりも小さな値を入れるとなかなか安定しません。DはPよりも大きい値(+1以上)を入れてから始めてください。
Dパラメーターを増加させると、目には見えないブーンブーンとかなり細かく震える(モータ音が鳴る)のは「操作が強すぎる」症状です。この場合はパラメーターを徐々に減少させます。
「外乱発生時にハンチングが発生しない限界点」の「外乱発生時」は小刻みに速く動かすテストでもOKです。またハンチングは「モーターの脱力」に読み替えてください。
最後に。
具体的な調整方法については、「GimbalSetting」のページを参照してください。
3軸ブラシレスジンバル歴2ヶ月未満、しかもシステム・制御工学知識のない「調整信号。」による解説なので、絶対間違っていないよ!とは断言できません。間違いを指摘して頂けると更に勉強になりますので、専門家さまのツッコミをお待ちしています。
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Comment
これでモヤモヤしていたものが解決しました。
やっと「PID」の入り口にたどりついた感じです(^^ゞ
>>補足説明<<
【6】PIDパラメーターを求めるコツの「I」パラメーターは最低でも各3軸「0.01」を入れてください。ゼロにするとPDをいくら調整しても安定しません。
最初にPを調整しますが、DをゼロまたはPよりも小さな値を入れるとなかなか安定しません。DはPよりも大きい値(+1以上)を入れてから始めてください。
ハンチングは2種類あります。Pパラーメータを減少させると、目に見えてブルブル震えることがあります。これは「操作が弱すぎる症状」です。
この場合はパラメーターを徐々に増加させます。
Dパラメーターを増加させると、目には見えないブーンブーンとかなり細かく震える(モータ音が鳴る)のは「操作が強すぎる」症状です。
この場合はパラメーターを徐々に減少させます。
「外乱発生時にハンチングが発生しない限界点」の「外乱発生時」は小刻みに速く動かすテストでもOKです。またハンチングは「モーターの脱力」に読み替えてください。
調整信号さん ありがとうございます。
きっと私のような迷える子羊たちが、このページにたどり着いて希望を見つけ出すことでしょう。
特に8bitのコントローラーは「動かすと位置がずれて戻らない」という現象が多かったように思います。こちらの記事を読むと、その辺の対応がトライできるように思います。
必要であれば本文を修正しますのでご指示ください。
GUIのボタン一発で(モーターのAUTOボタンで)最適なPIDが自動で入る!みたいにならないもんですかねぇ
調整する楽しみってのもあるんでしょうが^^;
籐製信号さん
本文に追記してみました。
ありがとうございました。
DYSはBGのカタログサイトに5d用のGUI用のプロファイルの提供を始めました。
HHG5D.zipと言うものです。
http://www.dys.hk/ProductShow.asp?ID=62
杉吉さん おはようございます。
情報ありがとうございます。早速ダウンロードして中身を確認してみます。
まずは御礼!どもども〜w
杉吉さん、こんばんは。
情報有難うございます。
DYS製プロファイルを早速ダウンロードして、GUIで確認しました。
勉強になるのでお手本として助かりますね。
5D2は持っていないので実証できませんが、パラメーターを見て、設定の推測しました。
PIDのPITCHだけがPよりもDの方がが小さいのは、レンズが長いと前後バランスの関係上、オーバーシュートが大きくなるから緩やかなDパラメーターにしているかなと推測しました。
逆に短いレンズの場合はP<Dでイイかなと思います。
モーターパワーは想定通り、YAWを一番強く設定、次にROLL、PITCHは一番弱く設定となっています。
アドバンスのSensorにあるGyro high sensitivityが使われていないのは「アレ?」と思いました。
理由はわからないです。
こんな感じでプロファイルをチェックしました。
調整信号さん
凄い早速分析されたのですね。
Zipには2つのプロファイルが入っていますね。
一つはタイトルからして5D2用だと推測できます。どうせならレンズも表記してくれないものですかね。
ただ磁石の数の設定から推測するに私のBGとモーターの組み合わせが違うようです。
アドバンスのSensorにあるGyro high sensitivityは私も使っていませんね。
あれを入れると何故か結構長い周期でYAWが動きます。
さくっと明日公開用の紹介記事にしてしまいました。明日のコメント欄にツッコミいれてください(爆)
最近忙しかったり雨降ったりでカメラに触る時間が取れません(T_T)
今更なGH3ネタになることもあるかとは思いますが優しくご指導ください(笑)
よろしくお願いいたします。
ご質問は掲示板へお願いいたします。